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蜂の女王

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第一話

女王キョーの寝室へ、ローヤルゼリーを運ぶよう命じられた王女みつこ。
緊張しながら扉を押すと、そこに広がっていたのは――目を覆いたくなる光景だった。
若い捕虜のオスが、女王のもとで苦しげに身を震わせている。
女王はその表情すら愉しむように、爪を背に立て、甘い声を漏らした。
みつこは思わず悲鳴をあげそうになり、咄嗟に息を殺す。
(見てはいけない……!)
羞恥と罪悪感に押し潰されそうになりながらも、その目は逸らせられない。
やがて、オスが限界に達した瞬間――その体は女王に抱かれたまま、びくりと痙攣し、力なく崩れ落ちた。

世界が裏返るような衝撃に、みつこの心臓が跳ねる。

「……っ!!!」
こらえていた息が破裂するように、みつこの喉から悲鳴が漏れた。
胸の奥が引き裂かれるような叫び。
死んだ。
ほんの一瞬前まで生きていた男が、歓喜と同時に命を失った。

女王は涼やかな瞳でみつこを見据え、冷たく言い放つ。

「死は、オスが成就した証。そして、種の保存こそが我らの宿命」

その場に根が生えたように動けないみつこ。そこへ侍女いちこが現れ、
謁見の申し出があると報告。

女王はすぐに立ち上がり、死体を一瞥すると「片付けておけ」とだけ命じて部屋を出ていった。

入れ替わるように侍女ななこが入り、倒れたオスを冷静に運び出しながら説明する。
「オス蜂は皆、こうして果てます。殉死こそが役割なのです」
理解を拒みながらも回廊をふらつきながら歩くみつこの前に、
見知らぬ青年が現れる。光をまとったように美しい金髪。

(・・・誰?)

王宮のどこにも見たことのない顔立ち。
振り返ったみつこの胸に走ったのは、ただひとつの妄想。
(明日、あの人も・・・女王の寝屋で冷たい骸になるのだろうか)
彼女はまだ知らなかった。この出会いが、やがて彼女の運命を狂わせる引き金となることを。

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